PROJECT

八田邸プロジェクト【令和2年度選定】

[自分らしく暮らす 次のステージへ]
 京焼の産地として栄えてきた五条坂界隈。町内には河井寛次郎記念館をはじめ、京焼の伝統を伝える陶芸家の自宅・工房が軒を連ねています。八田邸は京焼に従事されていた八田蘇谷氏の住まい兼工房でした。祖父(初代蘇谷)から父(2代蘇谷)へ、そしてこの京町家で生まれ育った八田宗子さんへと受け継がれました。
八田さんは次なるライフステージの場として、お住まいを充実するため、親しい友人や仲間たちと一緒に、まちに開かれたカフェ・ギャラリーを設える抜本的な改修工事に取り組まれました。まちセンとの御縁は、令和元年にご相談の来られたことから始まり、ファンドを活用した改修、さらには調査などのお手伝いを経て、令和4年に景観重要建造物・歴史的風致形成建造物の指定を受けられました。

令和2年度選定 八田邸
■工事内容 :屋根、外壁、建具修復
■工期:令和2年12月~3年8月

[改修を楽しむ]
 ファンドでは、外壁や大屋根の改修に対して助成を行いました。工事中には、ご友人の成安造形大学教授夫妻と学生参加の竹小舞編みと土壁の下塗りのワークショップを開催されたほか、まちセンが主催するファンドへの寄附者や京町家相談員向けの見学会にもご協力いただきました。
 また、家に大量に残されていた青磁の作品を土間に埋め込み、茶巾筒を並べて土壁のアクセントにするなど、施工者と相談しながら遊び心も取り入れた改修となりました。

改修前の室内

[所有者より]八田宗子さん
 生まれ育ったこの京町家を受け継ぐことになりました。ただ、住むには広すぎることもあり、「お世話になった近所の方々が気軽に立ち寄れる所にしたい」という思いから、青磁作家の父・八田蘇谷の作品を中心としたギャラリー兼飲食エリアを備えた改修を行うことにしました。いざ改修を始めてみると、近所の方や友人が作業を手伝ってくれるなど、ますます交流も増え、さらに京町家への愛着も湧きました。住まいとしてもとても快適になりました。
 改修を終え、ご近所の方だけでなく観光の方も立ち寄ってくださる機会が増えました。庭の様々な花木や、訪れる小鳥たちのさえずりを楽しみながら、ゆっくりとした時間を過ごせる場所になりました。今後も、地域に開かれた京町家として、皆さんがほっと一息つけるような場づくりを目指したいと思います。
改修後の室内
                 COLUMN
     [町家博士 大場ファンド委員長より]

         京町家まちづくりファンド委員長
                大場 修 氏
        立命館大学 衣笠総合研究機構 教授
 八田邸は、高塀造の町家の構成をベースに建てられた専用住宅です。高塀を持ち、内側に玄関庭を設ける点に特徴があり、しかも一階の小振りな出格子窓に近世以来の伝統を、二階のガラス窓に時代性を感じさせる、京都近代の仕舞屋型町家として貴重です。今回の改修は、出格子窓など当初の要素を大切に保存するなど丁寧で、ファンドの助成事業らしい質の高いものになりました。期間中のワークショップも、伝統工法の理解を広める格好の機会となりました。今後、八田邸で繰り広げられる地域に開かれた多彩な取り組みに、蘇った京町家の魅力が大きく貢献することは間違いありません。
[まちに開く]
 カフェ・ギャラリー「蘇谷 sokoku」では朝ごはんと和カフェが楽しめます。「京都の親戚の家のおうちごはん」をコンセプトに、幼馴染の方と一緒に切り盛りされています。地域の方々にも開放しながら、ヨガのワークショップや鳥獣戯画勉強会等にも活用されています。これからも町内会の行事・祭事の場や、地蔵盆・御火焚きの際等の作業場としても開放されていきます。
八田邸が心地よいお住まいであるとともに、地域の方に広く親しまれる場としても根付くことを願っています。

※この記事の内容は記録集に記載しています。

場所

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