活動実績

講演摘録

京町家が面白いブーム

京都大学名誉教授 三村 浩史 氏

一方で、京都では町家が面白いというイメージが広がってきました。京都観光では、だいたい、東山山ろく、西山山ろくの社寺をめぐるのが定番でした。そういうところは昔の貴族とか権力者がお寺の寄進をしたりして優れた景勝地になりました。京都に来たらそういう山ろくの社寺を回る。リピーターは、あんまり人が行かない社寺庭園をこまめに見るとか、最近は、春と秋、五山の送り火だけではなくて、冬にも良いところがあると、底冷え観光をツアー会社が打っていますね。「誰もいないお寺の境内でたたずむあなた」とか言って、京都はなんでもツアー商品になるのでありがいたいのですが、そのようなブームの一つに、「町家が面白い」があります。最近は、京都駅のブックショップなどでも「あなたの知らない京都」とか「ここだけの京都」とか言う本がいっぱい並べてあります。そういう本のなかで「町家でごはん」なんて本が売れている。なぜ町家でごはんを食べたらおいしいのか?要するに雰囲気で、こぎれいなグッズショップとかごはんを食べられる店が楽しめる。まちなかは町家ブーム。観光客も社寺ばかりいくのに飽きて、まちなかを歩くのが面白くなってきた。いろいろ発見することころがあります。おまけに、SARSとかテロだとで、海外旅行が減っています。JRのぞみ号の増発で「そうだ京都、行こう」と、いっぱい人が来る。町家はおもしろいよ、町家の価値はあるんだよ、というキャンペーンはいちおう成功したといえるのですが、じゃあ、今町家を使っているお店はどのくらい町家の本質を理解しているのか?結構小器用に店舗デザインの人がおしゃれな店に切り替えています。格子をはずしてしまったり、町家をオブジェのように素材に使ってデザインしています。年輩の方から見るとちょっとへんだけれど、若い人が外から来ると、これが京町家だと。彼らはエトランジェみたいなものですから、町家風のレトロなところがあると、これが京都だと気持ちをひきつけられる。多分、店の改装の仕方なんかを見ていると、その店が閉じられると、町家も運命をともにするんじゃないかというものがあって、町家がこれだけ注目されてブームになってきたのはうれしい一方で、商品化されて消耗品になっているんじゃないかという危機感をもっています。

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