活動実績

講演摘録

現代に守り活かすための次のステージ

京都大学名誉教授 三村 浩史 氏

マンションに変わっていく、残ったものは日陰者にされていく。どうしたら、現代に生き継いでいけるか。町家というのは金閣寺とか、銀閣寺とかのように重要文化財ではありませんので、つぶれても誰も問題だと言わない。住んでいる人、使っている人がいて成り立っている。古い町家はどんどん消える一方で、現代でも建築家が坪庭を活かしたり、まちと調和を図った新しい町家ができている。そういう維持管理と新陳代謝をしながら移っていくような都市住宅の状態、それが町家の姿なので、町家が育っていく土壌、そんな場所があり、住みつく人がいるとか町家がいきいきできる場があるとか、そんな土壌が無ければ、最後の20件くらいは文化財に指定して保存するというくらいで、20世紀にはこんなものが残っていましたよ、ということになりかねず、その伝統を生かしてきちんと守っていく、そして活かしていく、そういうステージに持っていくには、このブームになった割には「及ばずながら」の状態であることが問題であると思っています。どんな状態の町家があるかということは、前回の悉皆調査で分かっているんですが、その後どうなっているかとか、これから、町家が新しい時代のなかで残ったり改修されたり新しい町家ができたりして、町家の伝統がこの京都のまちなかで生き続けていけるかというような持続的な発展の方策はということになるとまだまだ怪しい限りです。意識は高まったけれども実践的な条件が確定していない。そろそろ都市政策としてもきちんと支援して、しっかり裏打ちをしないといけない段階になってきているんではないか。幸い、町家に対して関心が高まってきているのを追い風と受け止めて、その上昇気流にのってきちんとしたシステムをどう作るかということが課題になっていると思います。そういう意味では、第四世代の取組、フォースステージというものを考えていいのではないかと思います。本日、なんで私がここで皆様に話をしているかというと、京町家まちづくり調査、今回は5年目の再訪問の調査になります。それをどんな調査にするかを説明する場の前座をやれ、ということなんです。前回のリフレインの調査ではなく、第四ステージにふさわしい、本当にいきいきと町家を活用したり、あるいは壊されそうな物件を救って再生を支援していけるような仕組みづくりに役立つような調査が必要だと思います。だいたい、役所とは4月に予算がついているはずなのに、12月になってから言い出して、年度末に報告書をくださいなんて、そんなの無理だと思うのですが、要するに、やってみて面白い、第四ステージに向けて指針が得られるような調査になったらいいな、とここはアジテーションをしたいと思っています。一人一人が違った視点で違ったことについて調査したり、100人が100人違うレポートを書いてきても調査報告にまとめるのは難しいですから、いちおう共通仕様書をもって、そのうえで個人の発見も加えて、最後に議論してまとめるとかいうことです。調査をする前に参加者の意見をできるだけ盛り込んで、やって面白くてためになる調査マニュアルができていれば、元気もつき、役にも立ち、多くの方の同意も得られるのではないかと思いますし、また、そう願いたいと思います。

もとのページへ戻る