活動実績

講演摘録

世界歴史都市の保存と創生

京都大学名誉教授 三村 浩史 氏

それで、本日は「基調講演」なんて、立派なタイトルをいただいています。「世界歴史都市の保存と創生」、こんな話は京都会館でも借りて2時間くらいお話したいのですが、なんでこんなタイトルがついたかというとお配りしている資料がございます。最近私が書いたものでございます。大阪市市政調査会から、現代日本の主要な大都市のトピックスを集めて特集号を出したい、ついては最近の京都のトピックスを書いてくださいと言われ、全国の人の支持も大事だと思って書きました。そのコピーを景観・まちづくりセンターにお渡ししたら、これが本日のテーマになったのです。 この内容を説明しますと、町家と都心部のまちなみを強調しております。はじめに、京都にかかわる文化人たちが名をつらねた「国家戦略としての京都創生の提言」去年6月のアピールを紹介しております。「世界の歴史都市の中で風土、歴史、文化と芸術の凝集、そして文化的創造力からして、京都を現在に持続するということが大事。」。ローマのように遺跡と現代都市が並存している都市、あるいは遺跡になってしまった都市とか、いろいろあります。両方が一緒に同じ町の中で生き続けている都市というのは世界的に見ても割と珍しい。それが非常に重要であるという評価です。そういう都市の姿を世界で探してみると京都はまさに注目されます。千年以上の歴史をもちながら、現代に生き続けている、遺跡になってしまっていない都市は意外と少なく、そういう意味では都市全体が世界遺産です。しかし、いまの世界遺産指定では有名社寺を中心にして、京都のまちというのはそれら指定された遺産のまわりの環境を損なわないために、無茶な開発をしない保護地区、バッファーゾーンになっています。だから、まち自体は保護されていない。しかし、まちも大事ですと。次に、京都には「京都人」がいて長い間文化を守ってきたが、今や残念ながら京都の力だけでは守れないと痛感しているので、国家財産として守ることを国家戦略としてとりあげろと、いささか仰々しい提案ですね。京都を保全しようとすると今はクライシスである、と言う認識はありまして、京都を保全、再生、創造して活用発信するための提案として創生基金を作る。歴史都市再生法を作る。どんどん壊されそうなマンションとか、売られそうな建物とか、景観を破壊するような建物とか、規制をするだけじゃなくて、必要であれば買取り、補償、修復、転用、流通というところまでやっていかないといけない。それから1千年以上の都市の記憶装置として京都歴史博物館を国設する。巨大な博物館をイメージしがちですが、京都自体が都市博物館であるとするなら、こういうものを建てるのは、あんまり賛成ではありません。私のアイデアでは、すでにある文化施設、展示館、資料館、大学などを含めて1千箇所くらいの分館方式にし、市民から募集したスタッフもふくめて学芸員1万人くらいのネットワーク型の都市博物館をつくったらどうだろうかと考えています。そこにはもちろん町家も町衆も含むわけです。観光という世界大交流時代における選択。観光客が京都は3千5百万人といっていたのが、去年くらいから4千万人を超えている。「そうだ京都、行こう」と言ってのぞみが運んできた。京都の経済界の方は5千万人、さらには7千万人を目指せというのですが、この盆地の中にそんなに呼び込んで、クォリティオブツーリズム、観光の質を来た人にちゃんと保障できるのかという点があいまいです。京都人は長い間京都文化を守ってきたと、これが今あやしくて、京都人は今どこにいるの?という調査も合わせて市長さんにやってもらわないといけないわけですね。「あなたは京都人ですか」って。この調査に参加される方は皆さん京都人という認定をしてもいいと思うのですが。

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