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14 offsait studio

14 offsait studio

offsait studio:村上拓司さん(代表取締役)、チャムルジュ・オヌルさん(マネージャー)

日本最古の歴史を持つ花街であり、格式高い文化発信の地であった「島原」。史跡「角屋」からほど近い築約90年の京町家で、「offsait studio」という宿とアパレルショップを営む村上拓司さんとチャムルジュ・オヌルさんにお話を伺いました。

1.町家はサステナブルな建物

公私ともにパートナーである村上さんとオヌルさんは、2017年にLGBTQにフレンドリーな宿をはじめようと、京町家の物件を探していました。故郷のドイツでは幼い頃から学校や家庭でごく当たり前にサステナブルについて教わっていたというオヌルさん。日本の新しい家は使い捨ての素材の「プラスチックの家」のように見えていたといいます。宿を構えるなら、年月と共に味わいを増す良質な素材で作られ、実際に長い年月受け継がれて建っているサステナブルな建物を選びたい、そんな思いで建物を探していたときにこの京町家と出会われたそうです。リノベーションの際には、解体時に出た古材は棚や内装に再利用し、仕上げの塗装や壁塗りは自分達で行いました。

自然や年月を感じる木部や石の腰壁と、新しいガラスの調和が目を惹く外観。

 

2.アパレル事業の立ち上げへ

おふたりの手で蘇った宿は、その心配りと居心地の良さから次第に評判となりました。多様なバックグラウンドを持つゲストを迎える多忙な毎日でしたが、コロナ禍をきっかけに、新たな事業を考えることになります。

海外からのお客さんはサステナブルへの意識が高く、ビーガンやベジタリアンの方も多かったそうです。そういったお客さんとのコミュニケーションから、サステナブルに改めて興味を持つようになっていました。

また、村上さんは前職でインドやバングラディシュへ行き、エシカルファッションに興味を持っていました。一方、オヌルさんは宿の運営の傍ら、京都大学の大学院で「東アジアにおける持続可能な経済開発」について学んでいました。2人が好きな「ファッション」と、興味を持っていた「サステナブル」をキーワードに、宿は1日2組までに限定し、1階のスペースでアパレルブランドを立ち上げることになりました。

入口正面。垂れ壁の一枚板から、吟味された材料が使われた建物であることが窺える。

 

もとは宿の共有スペースだった店舗部分。靴を脱いで上がる落ち着いた空間となっている。

 

3.ストーリーを持った製品たち

「offsait studio」で取り扱っているのは、環境や動物に配慮された衣料品です。特に目を惹くのはサボテンから作られたレザーを使ったアイテム。やわらかく耐久性にも優れ、生産過程の環境負荷が少ない魅力的な素材です。生産の過程だけでなく使い終わった後にまで配慮された製品も多く、服の製作時にでる端切れで作った帽子もあります。

衣料以外にも、村上さんのご実家の金属工場で出た金属片を、オヌルさんのデザインで再成型したお香立てや、使用されなくなったブラウン管テレビのディスプレイガラスを再利用した製品など、ストーリーのある製品が並んでいます。ものづくりに関わる人の思いや素材の背景を知ると、さらに愛着がわくというのは、町家のような建物にも共通することのように思います。

サボテンレザーを使ったバッグや帽子。コートなどの製作時に裁断で出た端切れのレザーで作られる。

 

おふたりの理念に通じるインテリア雑貨や食品も置かれている。

 

ブラウン管テレビのディスプレイや蛍光灯のガラスを再成型したアイテム。

 

4.サステナブルの先へ

サステナブルな素材とはいえ、資源を消費していることに変わりはありません。大量に生産すれば、当然環境に負荷はかかります。ユニセックス&フリーサイズというデザインは、社会の枠組に縛られずにファッションを楽しむことができるだけでなく、生産ロスを少なくすることができます。着古した後に、良質な生地を再利用できるよう、継ぎ目の少ないデザインにすることや、染め直しなどで循環させていくといった、物の行く末まで考えたアップサイクルにも力を入れておられます。サステナブルというコンセプトでスタートしたアパレル事業ですが、SDGsがあちこちで掲げられている今、サステナブルであることに満足するのではなく、まずは物として惹かれるデザインであるという原点を大切にされているそうです。

生地を再利用できるよう、継ぎ目がないコートの背面。

 

5.循環をデザインする

おふたりが取り組むこのような循環型のサイクルは、ファッション業界に限った話ではなく、建築業界でも真摯に考え、実現していかなければならない事だと感じます。土へと還る、循環する素材を使うことや、廃棄される素材を再利用すること。国内や地元の製品を使う事で輸送の際に発生するCO2による環境負荷をできる限り抑えること。長く愛用すること。時代や気分に合わせて色や形を変えて使い続けていけること。京町家は循環型社会との親和性が高く、衣と住という人間の生活の基本において、大切なことは共通しているようです。おふたりの理念と共鳴した京町家という空間の中で、より商品の魅力と説得力が増し、ブランドの世界観が表現されていると感じました。

宿の水回りや客室には、元々この建物で使用されていた欄間や建具が生かされている。

 

6.今後について

2022年秋は京都の観光にも賑わいが戻り始め、宿の事業も再稼働しつつあります。今後は宿泊者向けの衣料やインテリアを開発し、ショップと宿につながりをもたせることを計画しています。ゆくゆくはオヌルさんの故郷であるドイツにも拠点を作って、日本とドイツを行き来しながらドイツでも事業を展開していきたいと考えられているそうです。ぜひ日本でも、ドイツに根付いたサステナブルなライフスタイルを紹介していただきたいですね。

 

offsait studio

URL:https://offsaitstudio.com/ja
Instagram:@offsait.sudio

 

※この取材は、2022年12月に行われたものです。
offsait studioは、2023年6月より拠点を京都からドイツのベルリンに移されました。
それに伴い、この京町家は新しくご入居された方が、宿兼ヨガスタジオとして活用されています。

Hachi.Kyoto Instagram:@hachi.kyotojapan

 

(記 吉田玲奈)
(編集 京都市景観・まちづくりセンター)

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