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16 まほろ―MAHORO―

16 まほろ―MAHORO―

直江千代さん(まほろ 所有者)

本願寺から徒歩圏内、五条通から西洞院を上ったところに、京町家を改修した「まほろ」があります。1階をレンタルスタジオ・レンタルキッチンとして、2階を女性専用シェアハウスとして活用されている直江千代さんにお話を伺いました。

1.ここでなら実現できる

 物件を探し始めた当初は、京町家は全く選択肢に入っていなかったという直江さん。京都のご出身で、幼いころからの「京町家は寒い」というイメージが強かったといいます。しかし知人の紹介で出会ったこの京町家は2年ほど空き家状態で、傷んではいたものの、丁寧に使われている印象を受けたそうです。ここは元の所有者が、京町家として大切に活用してくれる方に売却したいと譲り先を探されていました。一目見て、ここでなら思い描いていたことが実現できそうだと感じられたそうです。懸念していた寒さを克服するために、他府県の一棟貸しの町家に泊まり、対策や設備をお調べになったそうです。その甲斐あって、床暖房やタオルヒーターなどの技術を使ってうまく活用されています。

傷みの少ない土壁は、あえて手を入れずに活用している

 

2.これからはそんな場所が必要

 直江さんが女性専用シェアハウスやレンタルスタジオを始めようと思われたのは、ピースボートという3カ月ほどかけて世界約20ヶ国をめぐる船旅に参加されたことがきっかけでした。長い船内生活では、参加者同士でワークショップやディスカッションをする時間があったそうです。

 ディスカッションの際、様々な国の学生が意見を出し合うなかで、日本の学生がなかなか意見を言い出せずにいることに気づき、もっと日本の学生の身近に外国人と対等に交流できる空間があればと、シェアハウスを思いつかれました。まだ入居者募集には至っていませんが、留学生と日本の学生が入居して、生活の中で関わりを持ってもらいたいといいます。2階のシェアハウス部分には3つの個室が用意されており、シンプルながら必要なものがきっちり揃えられています。共有スペースのダイニングキッチンや洗面所には、直江さんのインテリアへのこだわりと入居者への気遣いが感じられます。

シンプルで統一感のある個室

 

朝の混雑回避に2つ設けられた洗面器

 

 またピースボートでは、参加者が講師となって、他の参加者に自分の趣味や特技を教えるワークショップが度々開催されていたそうです。そこに参加する中で、趣味や特技を極めて、ゆくゆくは人に教えたいと考えている方が、想像以上に多いことに気づかれたそうです。その経験から、夢の一歩目を後押しできるようなレンタルスペースを作りたいと思われました。「まほろ」でのワークショップは、参加された方の生活や暮らしを見つめなおし大切にしようと思えるものが多く開催されています。

 「まほろ」には、他のレンタルスペースと異なる面白い点があります。それはオーナーの直江さんが積極的にワークショップに携わっているところです。ヨガ教室では、直江さんが淹れられたお茶を飲みながらおしゃべりする時間があったり、金継きんつぎ教室では開催時間が遅く食事の時間と被るため、直江さんが軽い夕食の提供をされたりしています。ただ場所を貸すだけではなく、そこで過ごす時間や体験を併せて提供されていることが、ここを使いたくなる、ここに通いたくなる理由の一つだと感じました。

ヨガや金継など様々なワークショップが開催されている

 

広いレンタルスペース

 

3.京町家でやることに意味がある

 発酵食、ヨガ、金継など様々なワークショップが開催されていますが、そこに共通するのは「ものを大切にする、丁寧に生活する」という思いです。そしてそれは、長く大切にされてきた京町家でおこなうことで、より「ものを大切にする、丁寧に生活する」という気持ちが持ちやすくなると直江さんはいいます。こだわりのインテリアにも、その思いが現れています。一枚板のテーブルは、古くなっても表面を削ってオイルを塗ればまた新品同様に使えます。また、ランプシェードやダイニングチェアは、修理をして長く使うことを見越して、意欲のある若い木工職人や伝統工芸士の作品を採用されています。若い方の作品でありながらこれほど京町家に馴染むのは、共通する思いがあるからだと感じます。京町家は当時の職人がその技を込めて建てたもので、修繕を繰り返しながら居住者に合わせて変えていけるように作られています。この京町家も、古いものを少しずつ手直しして使われています。傷みの少ない部分はそのまま活用し、水回りは使い勝手の良いものに改修されました。玄関やレンタルスペースの戸は、直江さんご自身で趣のある古建具を購入し活用されています。

一枚板のダイニングテーブル

 

手の影が透けるほど薄く削られた木のランプシェード

 

4.今後について

 奥のレンタルスペースや坪庭には、若い芸術家の作品が飾られています。そんな芸術家たちが、ここで開催するワークショップやイベントを通じて、分野の違う方々と触れ合うことで、新しいアイデアや刺激を受けているそうです。このような機会を増やしていくためにも、いずれはもう少しオープンにしていきたいと楽しそうに語る直江さん。シェアハウスの入居者が決まって賑やかになるのも楽しみだとお話しくださいました。

レンタルスペースに飾られた絵画作品

 

坪庭に置かれた石彫作品

 

 

 まほろ―MAHORO―

 Instagram @046_mahoro

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