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19 株式会社尚雅堂

19 株式会社尚雅堂

和文具、雑貨などの企画開発・販売を行う「尚雅堂」。初の直営店「ADASHINO HOUSE(あだしのハウス)」を京都市の西北部、嵯峨鳥居本伝統的建造物群保存地区に位置する町家にてオープンされました。尚雅堂代表取締役の松尾さん、町家所有者の岩佐さんにお話を伺いました。

株式会社尚雅堂 代表取締役 松尾さん

 

1.縁の深い地域が新たな拠点に

 株式会社尚雅堂は、1964年に色紙短冊・和本の卸問屋として創業し、その技術を生かし、現在は和文具や雑貨を国内外に広く販売しています。京都・太秦の本社が手狭になったことをきっかけに倉庫を探すなかで、ショールームや小売り機能を併せ持つ拠点の構想が生まれました。京都中心部の町家は賃料の高さに目を見張ってしまいましたが、インターネットで見つけたこちらの建物に惹かれ、内見することに。

 印象的だったのは、ゆったりとした間口をもつ建物と庭がもたらす伸びやかな空間。一般的な町家に多い、間口に対して奥行が深い“うなぎの寝床”とは異なり、間口が広いために生み出された空間といえます。この空間を活かしたまま改修をすることで、商品の魅力を十二分に伝えるショールーム兼店舗となるのでは、と大いなる可能性を感じたといいます。

間口の大きさが印象的

 

 尚雅堂は創業以来、和歌を記すための色紙短冊を扱われており、松尾さん自身も嵯峨水尾にルーツを持つことから、多くの和歌に詠まれてきた嵯峨野の小倉山にほど近いこの地は、もともと縁のある場所。こうした背景も重なり、この町家を新たな拠点とすることを決められました。

 

2.「ADASHINO HOUSE」をつくる

 「改修のテーマは、商品をしっかり見せることと町家の魅力を引き出すことです。」と松尾さん。「できる限り元の形を維持することを心掛けました。ヨーロッパで歴史ある建物が維持されている姿に触れ、日本でも同様に継承していく必要性を感じたことが背景にあります。」と語られます。

 設計は自社商品のプロダクトデザイナーである福定良佑氏が担当し、表をショールーム兼店舗、庭に面した座敷を商談スペースとしました。当初は構造部材の一部を取り除き、大空間を確保する案もありましたが、安全性を考慮して見送り、柱や梁の入れ直しにとどめつつ回遊性を確保。天井は板を取り除くことで、虫籠窓を室内から見ることができる工夫も施しています。

 あえて店舗側からは庭を見せず、商談時に利用する応接室からのみ眺めることができるようにし、特別な空間に。床は畳から板敷きへ変更し、靴のまま利用できるようにしました。

 こうして完成した直営店名は「ADASHINO HOUSE(あだしのハウス)」。地名にちなんだ「あだしの」と、お買い物だけでなくショールームとしての機能をもたせたことから、ショップではなくあえて「ハウス」と名付けられたのです。

様々な想いを語ってくださる松尾さん

 

建物の歴史を重んじ、慎重に手が入れられている

 

ゆったりとした座敷で庭を眺めながら商談ができる

 

3.空間が生むコミュニケーション

 ADASHINO HOUSEは、ショールーム・商談・小売りを兼ねる拠点です。本社での商談では、デスクに商品を並べることしかできず、商品の魅力が伝えきれないと感じられていました。このショールームができたことで、様々なバリエーションの商品や柄を大きな空間に一堂に並べることが可能になり、空間全体で商品の魅力を伝えられるようになりました。

 歴史を重ねた町家の静けさと、商品の華やかさ。そのコントラストが商品の魅力をより引き立てています。そして、この空間で過ごす時間そのものが商品への理解を深め、また関係性も深める場としても機能しています。

空間そのものが商品の魅力をぐっと引き出す

 

4.地域とつながる

 ADASHINO HOUSEが位置するこの地域では住民同士の関わりが深いことが特徴です。それを踏まえ、松尾さんは店舗を運営されているだけでなく、地域の保勝会に参加され、地域の行事にも積極的に関わられています。また、建物周辺の掃除を欠かさずに行い、夜間は明かりを灯すことで人の気配を生み出すなど、周辺への心配りをされています。

嵯峨鳥居本の風景

 

 観光地に近接しながらも落ち着いた嵯峨鳥居本の空気を守りつつ、外からの人を受け入れる工夫が重ねられています。

 

5.所有者の想い

 こうした営みを見守るのが、建物所有者の岩佐さん。この建物を使われる方には、建物の形だけでなく、地域との関係づくりも大切にしてほしいという想いをお持ちでした。
 「松尾さんは土地勘があるため、近隣との関係を築くことも無理なくできる方と思いました。改修の際も改修内容を丁寧に説明してくださり、安心して任せられました。人通りが増え、夜間は明かりを灯してくださるので、防犯面でもよい影響があるのでありがたいです。」と岩佐さん。

まさかこんなにも綺麗に甦るとは思わなかった。地域活性化に繋がって嬉しい。と話してくださる岩佐さん

 

 

 鳥居本をはじめ嵯峨周辺には、空き家が点在しています。地域の静けさを保ちながら観光客を受け入れるにはどうすればよいのか。歴史を重ねた町家を丁寧に再生されたADASHINO HOUSEは、その方向性を静かに示しています。

 

 株式会社尚雅堂

 HP https://shogado.co.jp/

 Instagram https://www.instagram.com/shogado_kyoto/

 

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