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08 京都もやし町家

08 京都もやし町家

福士明子さん(㈱フォンス、京都もやし町家)

軽井沢に拠点を置き、首都圏をはじめ全国に飲食店を営業展開している㈱フォンスが、食イベントやお客様がステイできる場としてはじめて京都に設けたのが、京都もやし町家(レンタルスペース)です。

京都もやし町家の運営責任者で、2015年の開店の時から本プロジェクトに関わってこられた福士明子さんにお話をお聞きしました。

 1.気になる「もやし」の意味は?

「この建物の裏にあった工場で、昔、もやしを作っていたと聞いた時は、野菜の”もやし”のことかと思いました。そうではなくて、酒や味噌・醤油などのうまみ・こくを生み出す米こうじを作るための不可欠の材料である“種こうじ”を栽培していたとのこと。この“種こうじ”のことを業界で“もやし”と呼んでいるそうです。そのためのムロが3室ありました。それが「京都もやし町家」の名前の由来です。」

2.どんなところ?

京都もやし町家は、京都駅から徒歩圏内、地下鉄五条駅から程近く、世界遺産である西本願寺の目と鼻の先に佇んでいます。
京都では、住所を表す時に、南北東西の通り名を表記します。この場所は、油小路通花屋町上ルです。油小路通は平安時代からその名のある由緒ある通りです。花屋町通の名前の由来には、東西の本願寺に花を手向ける生花商が多かったとの説もあるようです。

油小路通の町並み

            
建物は、築120年以上の京町家です。改修の時に、土壁の中から見つけた新聞紙の日付が明治26年(1893年)とあったので、これを建築年として推測しているとのことです。

京都もやし町家の外観


3.偶然見つけたこの町家

京都もやし町家の所有者・運営者である㈱フォンスは、長野県の軽井沢に拠点を置き、首都圏を中心として「川上庵」「酢重」「沢村」「THE CITY BAKERY」などの飲食店を全国展開(2021年4月現在、51店舗)されています。
「料理」「空間(デザイン)」「サービス」を経営理念とし、「物作り」にこだわった店舗展開に特徴があります。

福士さんに京都もやし町家と㈱フォンスとのご縁について伺いました。

「小山正社長が、京都出店を目指して、偶然見つけたのが、この京町家でした。改修を検討した際に、飲食店や宿泊施設にすると、バリアフリーや快適性を確保するための大規模な改修が必要で、昔の風情を残すことが難しいと分かりました。小山社長は、それはしたくないという思いが強かったようです。京町家の魅力を多くの方に経験していただく道として、レンタルスペースを選びました。
改修設計は、建築家の魚谷繁礼氏に依頼しました。小山社長は、「ものを見る目」がすばらしく、空間へのこだわりも強いので、魚谷さんも苦労されたのではないでしょうか。」

現在の京都もやし町家は、母屋の1階は、トオリニワと、和室の続き間(一部板の間)の構成が踏襲されています。お客様をお迎えする空間として、壁際にはデザイン性を考慮したソファが配置され、生花が飾られています。2階は、板間、茶室、お風呂などになっています。

お客様をお迎えする空間

            

キッチンから中庭へ

                                    
母屋の奥にある中庭と通路の間は建具で仕切られていますが、簡単に開け放って風を取り入れることができます。自然を感じ取ることのできる貴重な空間です。

光と風を感じる中庭

       
奥の工場部分には、もやしのムロが3室あったそうですが、設計者の魚谷さんの提案で、1室は残すことにされたそうです。

設計者の魚谷さんは、建築雑誌の記事の中で、次のように言われています。
「改修の設計や現場監理では、既存に対して補強や補修の箇所をどのように処理するか判断が求められる。元の姿に復原するのではなく、新旧のコントラストを誇張するのでもなく、100年程以前に建築が新築され、改修が重ねられ、それにより至った現況を引受け、今回新たに手を入れ、それがまた後世へと引き継がれ、そしてまた手が加えられていくということを意識している。」(「新建築 住宅特集」2017年2月号)
京都もやし町家でも、このような意識を大切にしながら改修設計を行われたそうです。
残されたムロは、今では、この建物の刻んできた時間を身近に感じさせてくれる大切な場所となっています。

シンボルとなっている”モヤシ”のムロ


4.人気のあるレンタルスペースです

「レンタルスペースとしての使い方ですが、ウェディングパーティはコロナ渦にあっても人気があります。実際に使われた方たちには、皆さんに喜んでいただいています。この他、ウェディングの前撮り、撮影スタジオ、ハイジュエリーや着物生地の販売会場など、また、企業や大学のセミナー会場としても使っていただいています。」

大学のセミナーの様子


5.今後について

「小山正社長の家系は、長野で代々信州味噌の製造を行っていました。その本家は、小諸市で340余年の歴史を持つ味噌・醤油製造の老舗で、2021年に小山正社長が代表取締役社長に就任しています。
京都もやし町家の今後については、日本の古き良き生活文化を後世に残しながら、世界中の面白い人々が集まり、何か新しいものが芽生える(萌え出づる)、そんな開かれた町家を目指しているという当初の目標を守り、多くの人に見てもらえるよう守っていきたいと考えています。」

 

京都もやし町家  http://kyotomoyashihouse.com/

株式会社フォンス https://www.fonz.jp/

 

京都市では、市の取組をはじめ、歴史都市、文化首都、持続可能な都市、大学のまちなど、京都のまちの様々な側面について英語で発信する海外向け情報発信ページ(英語版のパブリッシングプラットフォーム「Medium」)を設けています。
「Medium」(下記リンク)にて、この記事の英訳をご覧いただけます。

「Medium」Kyoto Machiya Stories —Volume3: The Story of “Kyoto Moyashi House(京都もやし町家)”

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