シリコンバレー近くのヴィクトリアン・ハウスとFiloli Historic House & Gardensが、構想の原点。SOI COLLECTIVE(通称、ソイコレ)
Serendipity(偶然の発見)Openness(開かれた)Interplay(相互作用)
Collective(集合体の)
ソイコレの活用の始まりから改修、運営に一貫して携わってこられた作島立樹さんにお話をお聞きしました。
1.ソイコレとの関わり
作島さんはご自身がエンジニアで、アメリカ留学後にシリコンバレーで13年間勤務され、2010年に帰国、東京のIT企業で働かれた後、京都へとUターンされました。
ご実家は、株式会社作島という京仏具製造卸の会社で、ソイコレの斜め向かいに本社があります。阪急河原町駅まで徒歩8分、京都のまちの中心部です。
「この建物は、子供の頃は近所のお宅でした。先代の時代に会社が購入し、親族が住んでいた時期もありますが、ここ20年間は、倉庫代わりに使われていました。今回の改修の際、柱に、紙関係の組合の札が見つかったので、元はそういう家業だったのかもしれません。」
2.原点は、ヴィクトリアン・ハウス
この京町家を、元の姿に蘇らせ、自身の事務所兼多目的スペースに改修された構想の原点について伺いました。
「働いていたシリコンバレーの近くに、ヴィクトリアン・ハウスと呼ばれる19世紀後半の歴史的な建物が残されています。会社の同僚のお宅を訪問した際に、古い建物をリノベーションし、現代風に住みやすくして優雅に過ごすのは良いものだと思いました。暖炉があり、全部木製で、外側はきれいにパステルカラーで塗装され、中の調度品もアンティークなものを揃えて、雰囲気が出るように、うまく使われていました。DIYで維持管理しつつ大事に使われている様子を目の当たりにしました。日本の京町家も同じように維持できないかと思ったことの原点です。」
当初は、民泊や飲食店としての活用を視野に入れられたこともありましたが、現在は、広く、色々なタイプの人が使えるようにと、部屋を小割に分割し、時間で自由に貸せるレンタルスペースにされています。ご自身で事務所を構え、管理人もしながら運営するというスタイルです。
3.美しく元に戻す
ヴィクトリアン・ハウスの影響で、京町家を「美しく元に戻す」ことを考えながら、改修を進められました。
「元の京町家に復原することを基本にして、今の人が使いやすいように所々手を入れるというコンセプトで直しました。外観は明治期の元の姿に復原し、内部もできるだけ余計なものは取り払いました。」
一番のお気に入りは、オフィスから見えるウッドデッキとテラス。季節の良いときは本当に気持ちが良い、陽が入ってきて明るいし、青空が広がっているとのこと。
「庭の植栽については、戸建て住宅に住んだ体験で、維持管理が大変と思ったため、妥協してタイル張りにしました。鉢植えの緑以外には、製作中の藤棚が唯一の緑となる予定で、来年からは木陰を作ってくれるだろうと期待しています。」
蔵は、一階はギャラリー、2階は展示者がステイできる場として改修し、別の場所にステイ用のシャワールームが設置されています。
4.現在の利用状況
現在の利用状況について、お聞きしました。
「元々はコワーキングスペースとして開放しようとスタートしましたが、集客には苦労しました。そのうち緊急事態宣言が出たため、予約制に切り替えました。今は、定期的な書道教室の先生、芸舞妓さんの撮影を行うカメラマングループが、よく使ってくれています。また、直近では、近くのこども園に通う家族のハロウィンパーティーがありました。5家族で20人くらいが安心して集まれる場所と好評で、私が保育士さん状態でした。次はクリスマスパーティーの予約が入っています。」
オフィスの使い勝手についてもお聞きしました。WiFiは、改修時に光回線を引き、ルーターを一つ入れて外から見えないように。セキュリティについては、客用と仕事用のネットワークは分け、仕事に使うシステム類はすべてクラウドにおいて、必要なときだけリモートで繋いで終わったら切るなどの対策をされています。ご自身が、ご専門のエンジニアなので、特に不安はないようでした。また、物理的にはオフィススペースに鍵をかけて出入りを制限しているとのことです。
暑さ、寒さはやはり大変で、特に床暖房はあっても冬の寒さは際立ち、夏もエアコン無しでは暮らせないとのことでした。
5.公園のような京町家に
利用形態をお聞きした時に、「公園のように」という言葉が出てきました。これは、シリコンバレーの近くにあったFiloli Historic House & Gardensがイメージにあるとのことです。
「財団が会費や入館料をもとに運営している施設です。舞踏会のためのボールルームも残っており、パーティーや結婚式会場の利用で収益を上げる一方、地域の人に開放して自由に使ってもらうことで維持されている建物でした。私も子供を連れて遊びに行きました。このように市民が自由に出入りできて、公開しつつも保全されている様子を目の当たりにして、京町家でもそのようなことができればと思いました。」
現在は、いろいろな方に貸しながらリサーチして、最終的には会費、入館料、使用料などの課金のモデルを作りたいとのこと。
「アメリカのFiloliのように、財団によって運営されている、建物を使った公園のような京町家にできたら成功だと思っています。」
海外での居住体験を活かしながら、楽しく、京町家の活用に取組まれている作島さんのチャレンジが成功するようお祈りしたいと思います。
SOI COLLE(通称、ソイコレ)
Instagram @soicolle
京都市では、市の取組をはじめ、歴史都市、文化首都、持続可能な都市、大学のまちなど、京都のまちの様々な側面について英語で発信する海外向け情報発信ページ(英語版のパブリッシングプラットフォーム「Medium」)を設けています。
「Medium」(下記リンク)にて、この記事の英訳をご覧いただけます。
「Medium」Kyoto Machiya Stories — Volume5: The Story of “Soi Colle”