「京都歴史的都心のまちづくり」
「京都まちづくり学生コンペ2007」は、様々な専門分野で学ぶ学生が、京都のまちの歴史や現状について理解を深めることを目的とし、今後のまちづくりについて提案し、発表する場を設けるものです。あわせて、若い発想による提案が今後の京都のまちづくりの一助となることを期待します。
提案の対象地は、京都歴史的都心(北は御池通・南は五条通・東は河原町通・西は堀川通で囲まれたエリア)とし、「都市デザイン計画部門」と「地域まちづくり部門」の2部門を設定します。
提出物については、A1サイズのパネル1枚(横使い)、A4サイズの概要版1枚等とします。
一次審査と二次審査(公開プレゼンテーション)を行い、両部門で最優秀賞(1点)及び優秀賞(4点)を決定し、表彰します。
日本国内の大学院、大学、短大、高等専門学校、専門学校等に所属する、学生によって構成されるグループまたは学生個人とします。専門分野は問いません。
応募登録期限:2007年10月10日(水)
合同ワークショップ:2007年10月14日(日)
作品提出受付期間:2007年12月1日(土)〜12月7日(金)
第一次審査結果通知:2007年12月下旬
公開プレゼンテーション:2008年1月下旬
第二次審査・表彰式・合同ワークショップ2
応募登録用紙に必要事項を記入し、(財)京都市景観・まちづくりセンター宛にE-mailまたはFAXで送付してください。
登録手続きを行った方(連絡責任者)へは登録確認と第1回合同ワークショップの案内、「応募登録番号」をE-mailでお送りします。
※提出期間:2009年10月26日(月)〜10月30日(金)
※提出作品には、「応募登録番号」を記載してください。(②、③は裏面、④は様式右上欄)
※作品の表面には、応募者名・所属等が特定できる表記を禁止します。
※提出物(一式)は、小包郵便(書留)または宅急便で、期限内に応募提出先までお送りください。(当日必着)直接持参の場合は最終日の午後7時必着とします。
入賞者には、賞状及び副賞を贈呈します。副賞は以下のとおりです。
最優秀賞: | 都市デザイン計画部門 1組 賞金30万円 地域まちづくり部門 1組 賞金30万円 |
※両部門の内、特に優れていると評価された1組については、2008年6月にトルコ共和国コンヤ市で開催される「世界歴史都市会議」での発表権を付与するとともに、旅行券(グループの場合最大2名まで、個人の場合1名分)を贈呈します。
優秀賞: | 都市デザイン計画部門 4組 賞金5万円 地域まちづくり部門 4組 賞金5万円 |
委員長 三村 浩史(京都大学名誉教授、(財)京都市景観・まちづくりセンター理事長)
委員 大田垣 義夫(有隣まちづくり委員会)
委員 金城 一守(株式会社ゼロ・コーポレーション代表取締役社長)
委員 中村 伸之(城巽五彩の会)
委員 西嶋 直和(本能まちづくり委員会)
委員 西村 孝平(株式会社ハチセ(八清)代表取締役社長)
委員 藤本 英子(京都市立芸術大学准教授)
委員 山口 洋典(同志社大学准教授、應典院主幹)
後援:京都市、(財)大学コンソーシアム京都、京都新聞社、KBS京都、NHK京都放送局、(社)日本都市計画学会、(社)日本建築学会
協賛:(株)ゼロ・コーポレーション
1月27日(日)に開催された公開プレゼンテーションでは、80名の参加のもとで一次審査を通過した両部門5組による発表が行われ、受賞者が以下のように決定しました。
タイトル | グループ名 | 大学 (専攻) |
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本能 発 高倉 行 〜新しいコミュニティ形成を願って〜 |
立命館大学乾ゼミ | 立命館大学 (社会学研究科) |
タイトル | グループ名 | 大学 (専攻) |
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京都歴史的都心地区における「食と農」を通じた多世代間交流の促進 | 神大農経 | 神戸大学 大学院 (農学研究科食料共生システム学専攻食料環境経済学講座) |
みんなのはこ | urbantrap A | 京都精華大学 (芸術学部・デザイン学科建築分野) |
三条通 〜 記憶 記録 → 発信 共有 〜 |
京都工芸繊維大学 佐々木まちづくり研究室 |
京都工芸繊維大学 (工芸学部造形工学学科) |
路上駐輪問題解決による、中心繁華街における快適でやさしい歩行環境づくり・ 〜歩いて楽しいまちづくり実現へ〜 |
Route8(るーとえいと) | 立命館大学 政策学部 |
タイトル | グループ名 | 大学 (専攻) |
---|---|---|
まちはいきている 〜京都毛細血管血流促進細胞活性化計画〜 |
高田・神吉研究室B | 京都大学 大学院 (工学研究科都市環境工学専攻) |
※2008年トルコで開催予定の「世界歴史都市会議」への参加は上記のグループに決定しました!
タイトル | グループ名 | 大学 (専攻) |
---|---|---|
Yur-ing Campus - 有隣学区地域大学化計画 - | 狩野貴久・両澤けよう | 神戸大学 大学院 (工学研究科建築学専攻) |
SEEKING A NEW KYOTOSCAPE | 坪内研究室 | 京都造形大学 大学院 (芸術研究科芸術表現専攻) |
町並みのパズルピース - 京都分散型駐輪システム - |
景域環境計画学研究室B | 京都大学 (工学研究科 都市環境学専攻) |
SAKURASCAPE | 咲くrin’s | 京都造形芸術大学 芸術学部環境デザイン学科ランドスケープデザインコース |
44名の参加のもと、学生や審査員が個々の提案の実現化等について話し合いました。
井上 成哉(明倫まちづくり委員会)
明倫自治連合会まちづくり委員会委員長。歩いて暮らせるまちづくり推進会議副代表。
MOSS GREEN STUDIO代表。日本広告写真家協会<APA>京都写真家協会<KPS>各会員
現在祇園祭山鉾町の内の一つ八幡山の理事。
「景観は公益」ではないだろうか…?
「明倫学区」は京都の中心部に位置し、大企業の本社支社ビルが建ち並ぶ烏丸四条、キモノ産業が建ち並ぶ「室町通」、祇園祭に全ての鉾が巡行し、京町家が建ち並んでいる新町通、と複雑なゾーン形成を見せている学区です。また世帯住民の半数は共同住宅に暮らしておられます。
3年越しに地区計画を策定し、これから京都市の景観施策とも連動した、「美しい国づくり」ならぬ「美しい地域づくり」に取り組んで行かねばなりません。
しかしながら、昔ながらの京町家と高層の共同住宅との共生を如何に構築するのか?はとても難しい問題です。
自治連として、教育、交通、駐輪、防火、防災、または老齢化社会を迎え、地域でどのようにして支え合っていくのか…など自治連としての問題も山積しています。
私の仕事は広告写真なのですが、つくづく「写真とは歴史の記憶」だと思っています。学生の皆さん方も、ご自分の小さいときの写真を見る時、そこに家族と共に「自分自身の歴史」を見られるでしょう。
昔、東京荒川の洪水で、家が流され、アルバムも無くなるというシーンが印象的な「岸辺のアルバム」というドラマがありました。「自分」の存在とは両親や家族、そして育った環境などによって意味づけられて行きます。
「自分の歴史」が無くなるという恐怖は、都市景観にとっても全く同じ意味を持っているのではないでしょうか。
あなた方の過去も、故郷の風景も全て無くなるSF的イメージを想像してみてください。あなたは無人島に一人で生き延びられるでしょうか?あなたは映画「2001年宇宙の旅<スタンリーキューブリック監督>」のラストシーンのようにコンピューター化された世界で、孤独の中で生きて行くことが可能でしょうか…?
ちょっとテーマが大きくなりすぎましたが、私達人間にとって、私達を取り巻く「環境…や景観は公益」であると思わざるをえない状況に来ているのではないでしょうか。
皆さん方の力作の応募を期待しています。
大田垣 義夫(有隣まちづくり委員会)
有隣自治連合会および有隣まちづくり委員会会長。その他、社会福祉協議会をはじめ幾つかの団体の副会長等を歴任する。
平成19年より内閣官房から「地域活性化伝道師」に認定され、これまでのまちづくり活動で培った経験や実績を全国の課題を抱える地域に伝える活動も行っている。
有隣まちづくり委員会は2002年6月に発足しました。
有隣まちづくり委員会は、地域課題として、@マンション住民との交流の促進、A小学校統合による元有隣小学校の跡地利用、の2つを掲げています。
有隣学区は京阪、阪急、地下鉄、JRの駅に近いこともあって、20数年前からマンションが建ち初め、2007年現在、0.211平方キロという狭い校区に75棟のマンションが林立しています。学区の世帯数は2336世帯(平成17年の国勢調査)。うち、マンション世帯は1907世帯(2007年1月、有隣まちづくり委員会調査)で8割を占めています。更にマンション世帯の7割以上の1375世帯がワンルームマンションであることが有隣学区のマンションの特徴です。
農村型社会は確かに息苦しい側面があるとは言え、人間関係が余りにクールな都市型社会が必ずしも生活しやすいとは言えません。大きな地震が頻発している今日、安心・安全の観点からは大きな課題が残ります。
有隣まちづくり委員会は、学区内に住む全ての人が生き生きと生活できる地域社会でありたいと考えています。マンションにお住まいの方も含めて、今流行の「地域力」を高めたいと考えています。マンション調査、マンション・フォーラム等も実施してきました。マンションの子どもたちのための地蔵盆として誕生した「ふれあい地蔵盆」(2007年度で5回目)や子育てサロン「ユーユー」(2004年11月スタート)など定着したものはありますが、マンションとの交流は必ずしも実を挙げているとは言えません。
元有隣小学校の跡地利用について、京都市企画調整局は、1994年8月、小学校跡地の活用について、京都市民や京都を訪れる人たちのための「広域用地」、行政区内の地域住民のための「身近用地」、その時代のニーズに応えるため10年間凍結する「将来用地」の3つに分け、元有隣小学校は「将来用地」に位置づけられましたが、その指定も2006年3月で切れました。
そこで有隣まちづくり委員会では、2007年4月に公募による「まちづくり構想・跡地ヴィジョン委員会」を立ち上げ、既に数回の会議を重ねているところです。
有隣学区は、職住共存地区で、伝統的な京都の文化や伝統産業を支えて下さっている方々が、減少したとは言え、多くお住まいです。そういう歴史的な良さを活かしながら地域の活性化をどう進めていくかが、跡地問題とも絡んで今、課題になっています。
今回このコンペに参加下さる学生の皆さんから、有隣まちづくり委員会やプロジェクトチームである「ヴィジョン委員会」の委員も目を見張るすばらしい提案がなされることを期待しています。
金城 一守(株式会社 ゼロ・コーポレーション代表取締役社長)
1948年生まれ、兵庫県淡路島出身。1981年、京都市北区にてゼロ・コーポレーションの前身である京都住宅販売を設立(96年社名変更)。現在、注文住宅・建売住宅の建築、販売をメインに、街づくり、市街地再生等の事業を展開。京都の30年後の良質な街並を提案する「北大路まちなか住宅コラボレーション」ではグッドデザイン賞を受賞、家づくりを景観づくりと捉える手法への評価は高い。また、都市居住推進研究会の運営委員としても活躍中。規制の見直しや景観保存への提言を通じ、積極的に京都のまちづくりに取り組んでいる。
「コンペと学生に期待すること」
常にビジネスの視点からでしか「まちづくり、家づくり」を発想出来ない私はすでに奇形であるのかもしれない。もう少し自由な発想、私自身が持っている枠から抜け出ると、思いもよらぬ、実利的で感動的な発想があるのかもしれない。
企業家でありながら、旧市街地を眺める時、ふと、まちなかすべて町家が連なることを夢見ることがある。そのようなまちなかを一人、道を見つめ続けて歩くのだ。車や自転車に邪魔されず、大正や昭和の濃密な光景が、歩き続けることで飛ぶように行過ぎる。そのような時間を夢の中で描き続けている。
自分の中の夢は勝手である。私の夢は単純にそのようなものでしかない。しかし、社会との関わりに希薄な学生の発想は、もっと空想的で超現実的なものであっても良いのではないかと思う。誰からも評価されない発想に未来が伺える可能性がある。
審査員受けしようと思い小さく纏めるべきではない。自分の発想に興味を持ち、膨らまし、どうしようもなく不条理になった時こそ展望がある。
中村 伸之(城巽五彩の会)
1958年生まれ。大学時代から京都に定住し、98年から都心のマンションに住む。登録ランドスケープアーキテクト(RLA)、技術士(都市及び地方計画)、大学講師。新都市や中心市街地の都市環境デザイン、里山再生プロジェクトに参加。地域活動として、城巽学区のまちづくり委員会(城巽五彩の会)、少年補導委員会、歩いて暮らせる街づくり推進会議(まちづくり観光担当)に参加。都市環境デザイン会議関西ブロックでフォーラム委員など担当。
「コミュニケーションの回路をつなぐ」
コンペ対象エリアのまちづくり課題は多様であり、コミュニティごとにテーマが違うが、ここでは私の関心事について述べる。
この数年間で都心部の住民は大きく入れ替わった。減少の一途であった人口が90年代末を境にV字回復し、人口が2倍になった学区もある。私の住む城巽学区は70年代の人口レベル(約4500人、2007年)に戻り、共同住宅の世帯数は全体の75%、人口は60%になった(2005年)。子どもの数も増え、統合した小学校で教室が足りなくなるという事態も起こっている。
もともと都市は流動性の高い社会であり、住民が入れ替わっても地域運営に支障がないようなシステムが確立しているはずだが、急激な人口増加と景観の変容に地域アイデンティティの危機を感じる人々もいる。
しかし流動化は一方で、地域再生のチャンスでもある。新旧住民が混在する新たなコミュニティが生まれつつあるとも考えられ、それに対応した地域運営が模索されている。そこで重要なのは、コミュニケーションの回路をつなぐことではないだろうか。
かつての、一声掛けて引き戸を開けて、というような気軽な付き合いと、オートロックの解除が必要なマンション(でも部屋番号も分からない・・・・)の距離感は大きく、最初のつまずきとなる。通りから段差なくつながるトオリニワに比べ、オモテに共有スペースがないマンションの空間構造は内向的である。顔の見え、挨拶のできる付き合い(私的なコミュニケーション)が自然に生まれるにはどうしたらいいだろうか?
町内会や自治連が新住民を受入れる公的なコミュニケーションも確立していない。町内会の規約、マンションの管理規約、町内会費や自治連負担金徴収ルール、広報システム、行事のあり方など、見直すべき課題は多い。
一方で、全員が一律に参加しなければならないと思い込む必要もない、5%から10%の人々が楽しみながら参加するだけでも、地域は生き生きとするのではないか?
地蔵盆、シニアクラブ、まちづくりイベント、サークル活動など、地域には文化的な受け皿が豊富にあり、新住民も多様な職業、知識、文化を持っている。子どもたち(親たち)は学校を核としたコミュニティをつくっている。
学区は、自転車でチラシを配布するような、せいぜい500メートル四方の空間である。ITの時代に、あえてヒューマンスケールのコミュニケーションを楽しむのが面白い。
様々な地域再生のチャンスが眠っている、それらをつなぎ情報を共有するコミュニケーションの回路が求められる。
西嶋 直和(本能まちづくり委員会)
本能まちづくり委員会委員長。
京都市市民参加推進フォーラム委員。
京都染色補正工業協同組合副理事長。
本能清々講社社長。
まちが元気であるかは、そのまちで生活する人たちの人間関係が重要です。本能学区では近年、マンションなど地域に新たに入って来られる方が増えています。そういった中で、これまで地域で生活してきた人たちがいかに「垣根」を低くして、新しい方たちに地域に入ってきてもらうかが重要になると考えています。このような想いから、本能学区では「まちづくり委員会」を発足させ、様々な活動を展開しています。「おいでやす染めのまち本能」では、本能学区が「着物」の「染」に関わる方々が多く住んでいることを知ってもらうことを目的に開催しています。「公開工房ツアー」「本能に咲くのれんの華」などの企画を展開する事で、きものに興味を持ってもらうことに加えて、きもの文化を通じて老若男女、 新旧住民のコミュニケーションを促すことができればと考えています。
また、地域の景観を考える際にも、やはり地域での人間関係が大切であると思います。マンションが増え、人口が増え、子どもが増えることは地域にとってはプラスの側面でもあるのです。そういった様々な側面を捉えたうえで、生活する一人ひとりが地域を愛することができる、そういった地域のあり方が重要であり、「形だけの景観」を整えてもあまり意味が無いのではと考えています。
今回のコンペで学生さんに期待することは、そういった人間関係、特に「家族の関係」について考えて欲しいと思います。今回の取組みを通じて、「家族のあり方」と、それを踏まえた「まちのあり方」について考え、学生の皆さん自身のこれからの人生にも活かしてほしいと思います。
西村 孝平(株式会社 ハチセ(八清)代表取締役社長)
立命館大学卒業後、積水ハウス株式会社を経て昭和50年株式会社八清入社、平成14年代表取締役に就任。
現在、不動産中古住宅再生販売(リ・ストック住宅)・分譲住宅の販売、不動産仲介業(土地・建物)・不動産賃貸業、不動産証券化事業・京町家の再生事業、土地有効利用(コインパーキング・コインランドリー)、資産相続相談センター開設を行っている。
今回のコンペで審査員をされている4人の「地域のまちづくり人」は、本当にすごい方々ばかりです。地域の視点はこれらの方々にお任せして、私からは実務的な視点、特に不動産売買の視点からまちづくりについてお伝えできればと考えています。
私はまちの活性化においては、子育て世代などの若い人が地域で生活することが大事だと考えています。しかし、歴史的都心地域は地価が高く、新しい景観政策の高さ規制などによって、今後はこの地域でマンションも建ちにくくなると考えられるなど、若年層が移り住むことが難しくなっています。
また、現在建っている山鉾町のマンションでも、地域活動の新たな担い手として地域も期待していたものの、思ったより若い層の入居が少なかったということがありました。
そこで、次のような提案は考えられないでしょうか?低層の共同住宅でも、若年層が入居できるような価格にできるような工夫。地価が高くても若い人たちが移り住むことができる仕組み。
また、所有者が持ったままで実際は空家で使われていない「売らない町家」や、近年歴史的都心地域でも増えてきた「駐車場」などの土地利用についても興味を持っています。
このような切り口に対して、家族の関係や地域の人たちとの関係、学校などの周辺環境などを考慮したアイデアを提案してくれることを期待しています。
歴史的都心地域には、私の事業所があり、また、私自身も小学生の頃からこの地域内で育ってきました。私にも大変馴染みのある地域です。
若い人たちが地域のコミュニティに加わることができ、4人の審査員のような「地域のまちづくり人」が今後も生まれ続けることができる、そんな歴史的都心地域であってほしいと思っています。
藤本 英子(京都市立芸術大学准教授)
京都市立芸術大学美術学部工芸科デザイン専攻卒業後、株式会社東芝入社、デザインセンターを経てコンセプトエンジニアリング開発部設立に参画。1989年公共空間デザイナーとして独立し、1992年建築士事務所エフ・デザインを設立。2001年より京都市立芸術大学美術学部デザイン科大学院美術研究科専任。自治体の景観アドバイザー(堺市、豊中市、吹田市、交野市他)、景観関連行政委員会企画委員、設計競技(戎橋他)や事業提案競技の審査委員(大阪駅北地区他)、まちづくりについて事業者・住民・行政が共に考える場(京都市、吹田市他)におけるアドバイザー等を歴任する。
まちは人々がかかわること、そして見られることで変化していきます。
いま、本気で京都のまちのよさを育みたいと思い始めた人々が、自分たちでもかかわれる、参加できる何かを求めています。そんな中、京都市も景観法を受けて、新景観政策で新しい一歩を踏み出そうとしているところです。
しかし継続的で質の高いまちづくりは、地域で生活する人々が主導になって実践してこそ、実現されていくものと考えています。このような地域の人々に受け入れられる提案を求めています。
学生のみなさん、既成概念に捕われない新鮮な感覚で、地域の現状が訴えてくるものを把握してください、そして目の前で起こっている具体的な問題に、興味を持って一歩踏込んでください。そこから生まれる新しい提案に期待します。
新たな歴史的都心モデルの誕生は、日本のみならず同じテーマを持つ多くの国々にも歓迎されることでしょう。多くの人々のかかわりによって、少しでも多くの歴史的都心が、次のよき変化に向かえるよう、このコンペに期待するものです。
山口 洋典(同志社大学准教授、應典院主幹)
立命館大学大学院理工学研究科博士前期課程修了。大阪大学大学院人間科学研究科にて博士(人間科学)の学位を取得。2004年より上町台地からまちを考える会事務局長。2006年大学コンソーシアム京都を退職し、大阪・天王寺にある浄土宗應典院の主幹に着任。「呼吸する、お寺」としての劇場空間にて展開される各事業の統括責任者として、地域に開かれた寺院の実践に取り組む。仏教とキリスト教とを横断し、臨床の知に向き合う。著書に「京都発NPO最前線」、「よくわかるNPO・ボランティア」、「CAFE:創造都市・大阪への序曲 」(いずれも分担執筆)など。
京都のまちは、「国際」、「歴史」、「文化」、「観光」、そして「大学」、ひいては「学生」、いろんな言葉がつけられて、その魅力が語られています。そうした京都の魅力をさらに活かすことや、あるいは改善が必要だと思われることに対して、自らの「独創性」のある視点を持ちながら「実現可能性」のある提案を行うこと、それが今回の「京都まちづくり学生コンペ2007」で皆さんに期待されていることです。その「独創性」とは、単に自分自身の珍妙なアイデアがあればそれで良いというものではありません。なぜならば、「実現可能性」という観点を重ねて考えてみれば、これまでの知恵に学び、最新の技術と他地域の実践などを参考にしながら、現状を分析し、今後どういう方向に進むべきなのか、実態に即した価値の提案と創造の実践が必要となるからです。
今回の提案においては2部門が設定されています。「都市デザイン計画部門」では、京都の魅力を高めていくためには、「どのような場所」で、「どのような人々」と、共に過ごすことが大切なのか、特にハードを中心にした総合的な都市デザインの提案を期待しています。また、「地域まちづくり部門」では、写真に撮ったときに伝わる魅力以外の、「そこに住み」、「そこに働き」、「そこに学び」、そして「そこに遊びに来る」人たちが、誇りを持ってそのまちのことを捉えていくことができる「仕組み」や「仕掛け」、さらには、それらの特長の「見せ方」に対して、皆さんの提案に期待しています。
最後に強調しておきたいことは、今回のコンペで提案される内容は、例外なく、実際にヒトが、そしてモノが動いている「まち」を対象にしていることです。そして、その中には皆さんも含まれているはずです。皆さん自身が、その提案が実現された時、まちをより楽しみ、そしてその楽しみをさらなる楽しみへと高めていくだけの想いと、行動を共にすることができる、そうした当事者意識をもった提案をしてほしいと考えています。