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18 株式会社乃村工藝社 ビジネスプロデュース本部(第一統括部 開発2部)京都営業所

18 株式会社乃村工藝社 ビジネスプロデュース本部(第一統括部 開発2部)京都営業所

山本勉さん(ディレクター) 森地毅さん(主任) 石倉美穂さん

祇園町南側、四条通を南に下がると「紅雪辻子(こうせつずし)」と名付けられた辻子の中に株式会社乃村工藝社の京都営業所があります。「紅雪辻子」全体を所有しているのは、No.1の記事でもご紹介した市村さん。乃村工藝社は市村さんと「テナント/オーナー」の関係でありながら「祇園 紅雪辻子プロジェクト」の事業パートナーでもあります。今回は、そんな乃村工藝社から3名の方にお話を伺いました。

石倉さん(左) 森地さん(中) 山本さん(右)

 

1.コミュニケーションからビジネスを生み出す場には京町家がどんぴしゃ 

 乃村工藝社はビジネスを通して、地域課題の解決などに取り組まれています。京都では2017 年からオフィスビルに拠点を構えていましたが、退居することが決まっていたため移転先を探されていました。単なる事務所ではなくコミュニケーションが生まれる場をつくりたいという想いと、京都といえば京町家とのお考えから、当財団がオーナーの市村さんをご紹介し、マッチングに結び付いたものです。

「京都一の、つまり日本一の暖簾屋を教えたるわ。」と、市村さんに教わった暖簾屋のもの

 

2.紅雪辻子の再建から京都を知る

 現在、紅雪辻子の東側の一部は空き地になっています。市村さんは既存の京町家の改修と併せて、その空き地に新築の町家を建てることで、辻子全体を再建したいという想いを持たれています。町家としての設計及び改修を、伝統構法の設計実績が豊富な末川協建築設計事務所の末川さんへ依頼され、再建を目指しておられます。その想いに共感した乃村工藝社は「祇園 紅雪辻子プロジェクト」の事業パートナーとして参画することになりました。これがきっかけで紅雪辻子に建つ西側の京町家に事務所を構えることになりました。

 京町家に営業所を構えたからこその文化体験ができていると乃村工藝社の石倉さん。市村さんとは日々顔を合わせ、様々なお話をされます。仕事の話だけではなく、一緒にまちを歩きながら「本物の京町家」について学び、夏の水打ちなどの京都の日常生活など、京町家のことはもちろん、京都で暮らすためのいわば生活作法を教わっているそうです。

紅雪辻子の入口にある看板

 

空き地に新築の町家を建て、紅雪辻子全体の再建を目指されている

 

3.130年のノウハウを活かして京都の伝統文化を継承する 

 乃村工藝社のビジネスプロデュースとは、社会的課題を取り込み、それを解決する構想を描き、実現に向け仲間をつくって連携し、それらによって事業を創出することです。生業や生活文化など、京都の、さらには日本の伝統文化が形として表れている京町家が減少し続けていることに課題を感じ、創業130年のノウハウを活かして伝統文化を継承することを事業化/実現するためにこの場所へ事務所を移転しました。

 

4.京町家のメリット・デメリット
  <こだわりが詰まった京町家から生まれるビジネス>

 コミュニケーションからビジネスが生まれる「場力(ばぢから)」を京町家は持っていると乃村工藝社の山本さん。仕事の話をしていても自然と会話が広がり、本筋と関係のない些細な雑談から解決するべき課題が見つかることも多いといいます。その雑談のしやすさは、市村さんが手塩に掛け、こだわりを詰め込んだこの京町家だからこそ生まれるものなのかもしれません。大正時代をイメージした空間で、石のタイルやモノクロのステンドグラス、バーカウンターなどが設置されています。改修の際には、本漆喰で壁を塗り、釘などの金物は用いず、木材は古いものと新しいものとが判るように仕上げ、常に「本物」を追求されています。

自然と会話が広がる、コミュニケーションからビジネスが生まれる場

 

暖簾をくぐると出迎えてくれるのはバーカウンター モノクロのステンドグラスも目を引く

 

 京町家をオフィスとして利用する上での難点もあります。まずは防災やセキュリティ対策が挙げられますが、それらの基準を満たすための設備機器の設置が課題でした。加えて、夏は暑く冬は寒いという京都特有の気候。それでも人間側が暑さや寒さに合わせ、割り切って暮らすものだと、市村さんから「がまんせぇ」「そんなもんや」と言われたと山本さん。

 とはいえ、京町家だからこそ得られる体験もあります。ひとつ屋根の下、アットホームな雰囲気だからこそ、社員同士の会話が増えコミュニケーションが取りやすいと乃村工藝社の森地さん。また靴を脱いで上がる2階は、床に木材が用いられ、やわらかさやあたたかさを感じられます。春や秋など気候のよい時期に窓を開けると心地よい風が吹いてきます。

「木の床が気持ちよいので、スリッパは履かずに素足でどうぞ。」

 

5.紅雪辻子の今後について 

 かつて市村家では代々紅雪堂という屋号で白粉屋を営まれていました。その屋号から着想を得て「紅雪・・辻子」と名付けられたそうです。隣には髪結い屋があったそうで、祇園を支えるお商売をされていたという歴史が感じられます。このような歴史的文脈を踏まえて生業をすることが、紅雪辻子で事業をする意義だと山本さん。歴史を紡ぐという想いを生かし、共感してもらえる事業者と繋がり、長く入居してもらえるよう、きちんと経営できるためのブランディングやアドバイスをしていくことが乃村工藝社の役割だとのこと。事業者には、例えば「紅雪」と冠した商品を並べるなど、「紅雪辻子」である意義を見出していただけると嬉しいと語ってくださいました。

 「新しく入居される事業者とともにつくりあげる紅雪辻子プロジェクトが楽しみなんです。」

 辻子の入口にあるトンネル路地を抜けると静かな空間が広がり、そこには「場力」のある京町家が佇んでいます。

 

市村さんが、檜の一枚板を岐阜の原木市に探しに行かれて誂えたバーカウンター

 

壁に留めるための、大きなマイナスねじを探すのに苦労された帽子掛け

 

 

 

 株式会社乃村工藝社

 HP https://www.nomurakougei.co.jp/

 Instagram https://www.instagram.com/nomura_kougeisha/

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